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夏休み

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あれはいつの夏休みだっただろう…
大事な友達と…大事な約束をした。
でもいつの日か僕はその友達のことやその約束がなんだったのか思い出せなくなっている…
それを思い出すために僕はまた、あの島を訪れる。
この島は「真新島(まあらたじま)」と呼ばれる北部に存在する島。
夏でも涼しい隠れた避暑地として知る人ぞ知るスポットだ。
島民は心優しく新鮮な食べ物がいつでも食べられる…ただとても遠いからあまり観光に向かないと言う訳だ。
祖父母が亡くなってから行く事が無くなったこの島へと足を踏み入れるのは10年ぶりになる。
『まもなく、真新島。真新島漁港に到着致します。』「10年ぶりなのに、全然変わってないな」
僕は船を降り、辺りを見回した。
祖父母が亡くなったあと、僕の叔母にあたる人がその家に住んでいる。事前に連絡を取り、この夏…祖父母の家に下宿させてもらえる事になった。
「確か港に迎えに来るって聞いてたんだけど…」どこにもそれらしい人が見当たらない。
まぁ両親から家の場所を事前に聞いていたため、僕はそれを頼りに家まで行くことにした。
町らしきところにたどり着いたが、島民は誰一人いない。僕は直感的にこれはおかしいと思った。景観は全く変わってないのに。杞憂だといいんだが。
家の前についた。表札には叔母の名字が書かれている。変わらない家。木で作られた昭和臭漂う民家。ただ何も音がしない。でも玄関にはちゃんと足跡がある。
「ごめんくださーい」
「すみませーん、誰かいますかー?」
返事がない…誰かが出入りしているのは確かだろう。
家の周りを見てみたが、窓も全部閉めきっていた。
だが、玄関の鍵だけはあいていた。
これはおかしいと思い、僕は家の中に入っていった。
「人の気配がない…」
さらに奥へ進んでみると一部屋だけ、灯りがついていた。
僕は意を決して中入った。
パンッ パンッ
『ようこそ!真新島へ!』
僕は呆気にとられてしまった。
誰もいないと思っていた島民が僕を出迎えてくれたからだ。
「えっと…これは…」
「驚かせてごめんなさい」
「皆あなたが来るのを待ってたのよ」
「え…あ、ありがとうございます。」
「えっと、もう知ってるとは思うけど、改めて自己紹介させてね。」
「私は夏川初音(なつかわはつね)よろしくね。」
「山下隼人(やましたはやと)です。夏休みの間よろしくお願いします。」
みんな僕をあたたかく迎えてくれた。
僕はそれがとても嬉しくて、前にも同じ事があった気がした。
10年前の夏休みにここに来た時にもたしかそう。みんな面影は残している。しかし、ひしひしと成長は感じられた。
僕の知らない時を彼らは一緒に共有している。僕にそれは埋められるんだろうか?しかし、そんな悩みを吹っ飛ばすかのように彼らは僕のために歓迎パーティーをしてくれた。
そんな楽しい時間もあっという間に過ぎてしまった。
僕は今、叔母さんと一緒に部屋の後片付けをしている。
「ごめんね、皆騒がしい人達で」
「いえ、大丈夫です。」
「そう言えば、今回はどうしてこの島に?」
「特に理由はありません。」
「10年ぶりに島で過ごしてみたくなっただけです。」
叔母さんにはまだ今回この島に来た理由をまだ話せない。
僕自信が、忘れてしまっていることを思い出すまで…
「あっ!そうだわ、まだ隼人君の部屋を案内出来てなかったわね。」
「こっちに来てくれる。」
「はい、すぐに行きます。」
僕は玄関に近い部屋に案内された。
「ここが隼人君の部屋よ。」
「まだ少しホコリっぽいくてごめんなさい」
「いえ、ありがとうございます。」
「それじゃ、あとの片付けは私がやっておくから、今日はもう休んでてね。」
「すみません、それじゃあお言葉に甘えます。」
「おやすみ」
「はい、おやすみなさい」
今日は楽しい1日だった。最初は人が誰もいなくて驚いたけど、島の人達皆いい人でよかった。
明日は少し島を見てまわろう。
そう考えていると僕は気がついたら眠ってしまっていた。
あたり一面に木蓮の花が咲いていた。僕はどこかで見たことがあるなー、と思いながらも思い出せない。きっとこれは夢だけど、以前あった光景のはずだ。なんだったっけ……。
そこに少女がやって来た。小学生ほどの大きさだ。気づくと自分もそれぐらいの身長になっていた。確信した。ここは思い出のひとかけらだ。そして、僕の忘れしてしまったもの。彼女はきっと僕の思い出の核となる人物だ。懐かしい雰囲気で屈託のない笑顔を僕に見せる。
「夢か…」
夢でみたあの子は一体誰だろう…
彼女が誰なのか思い出せないが、なんだかとても懐かしい…
時計を見ると、まだ朝の6時だった。
二度寝をしようか考えたが、少し島を散歩してみようと思う。
誰も外にはいないだろうと思っていたが、島唯一の神社の境内に人影があった。女性のように感じた。その人はこちらの存在に気づくとそっと何処かへ立ち去ってしまったようだ。
あとを追いかけようとすぐに足を動かそうとした。でも、不思議と動かせない。金縛り?いや、心の奥に自分で鍵をかけて、これ以上踏み込ませないようにしているみたい。
今はこれ以上進むのはやめよう。
僕はそう思い、一度家に戻ることにした。

家に戻ると夏川叔母さんが朝食を作っていた。
「おはよう、隼人君」
「昨日はよく眠れた?」
「おはようございます。」
「よく眠れました。」
挨拶をすませ、僕は朝食を食べはじめた。
「そういえば、どこかに行ってたの?」
「はい、早く目が覚めたので少し周りを散歩してました。」
「叔母さんこそ、朝は早いんですね。」
「これから本土まで仕事に行かなくちゃいけないからね。」
「それと隼人君」
「はい?」
「私のことは叔母さんとは呼ばないでね。」
「え…そういう訳には…」
「いいわね?」
「………はい」
目がヤバい…
朝食を食べたあと、初音さんは仕事に出掛け、僕は今日の分の夏休みの宿題を済ませ、これから何をするか考えていた。
インターホンが鳴った。出てみると、昨日歓迎会にいたらしい同い年くらいの女の子が立っていた。
「どうしたの?」
「あの……。私、えっとー、と、ともだちになってください!!」
突然だった。麦わら帽子をかぶった肌の白く華奢な女の子がはにかみながら、こう言ってきたら、胸がドキドキした。
「……えっと」
「す、すみません!」
「突然見知らぬ人にこんなこと言われて嫌ですよね!」
「だ、大丈夫だよ!全然嫌じゃないから!」
「ほ、本当ですか?」
「うん、本当だよ。」
「取り敢えずここじゃ暑いから、中に入らない?」
「はい!お邪魔します!」
突然のことで僕自身すごく驚いている。
年が近い女の子がこの島にいたこともだけど、いきなり友達になってほしいと言われたのは生まれて初めてだったからだ。
「改めて自己紹介をさせてください。」
「私は中野 藍(なかの あい)です。よろしくお願いします!」
「僕は山下 隼人です。こちらこそお願いします。」
「はい!隼人さん!」
お互い自己紹介を済ませたが、僕も彼女も緊張してしまい。なかなか会話が出来ない状態でいたが、先に中野さんが口を開いた。
「私、結婚させられようとしているんです。この島の長の36歳の息子さんと。それで、私を島から連れ出して欲しいんです。島の外に帰るとき!一緒に。」
ん?僕にはすぐに話を呑込めるほどの要領はなかった。
「ごめん、話がよくわからないんだけど…」
「す、すみません!最初から説明しますね。」
彼女は小さい頃に母親を亡くし、父親と二人で生活してきたらしい。この島には高校がなく、本土にある全寮制の学校で普段は生活していている。
「それで、なんで島の長の息子さんとの結婚の話になったの?」
「はい…私の担任の先生がその息子さんなんです。」
「先生はとても優しくて、他の先生や生徒からも慕われています…」
ここまで話を聞いて僕にはまだわからなかった。
そんな先生なら、彼女がいてもおかしくないと思ったからだ。
「でも先生が生徒に優しくしていたのは理由があったんです。」
「というと?」
「えーと、あんま大きな声では言えないんですが」
「うん」
ゴニョゴニョと耳元で藍は囁いた。いい匂いがしたが、言葉は衝撃だった。
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