ゆうすけとかなえ

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―――――灰になった貴女の姿は、僕の絶望そのものを表しています―――



「今日はけっこう寒いなあ。昨日はまだマフラー要らなかったのに。夜だからかな?とりあえずって言って持ってきて正解だったね!ゆうすけ、寒くない?」
心配そうだが、少し楽しそうだ。
「いや、それでもちょっと寒いな。まぁもう少しで店着くし、大丈夫だろ。」
徒歩圏内に良い店があるのは本当にありがたい。
「にしても、すっごい楽しみだなー!去年会ったし、そんなに変わってないとは思うけどさ。」
……うーむ……会った、になるのか……
「……。かなえは大丈夫なのか?そんな格好で。その上着、たしか結構薄いだろ。」
彼女はまだ、秋の装いである。
「んー…まあ、ある程度は?」
――なんだよそれ。

3日前から、僕らはずっと「一緒」だ。
1年前も一緒に過ごしていたが、その比ではないほどに、ずっと「一緒」だ。
最初は驚いたが、徐々に慣れてきた。
未だに分からないことがある…というか、分からないことのほうが多いが、それを気にしなければ特に問題は無い。
――話が見えない?それはまあ―――

「何だゆうすけ、もう来てたのか。」
今日の目的はこいつに会うことである。
「あぁ。今日俺、休みだしな。久しぶりだな、かずゆき!1年ぶりか?」
馴染みの飲み屋の玄関口で再会を楽しむ。
「たぶんそうだよな。あの日以来だと思うわ。」
暖簾をくぐり席に着きつつ、ビールを2つ注文する。

「かずゆき、今日は仕事だったのか?他にこっちに来る用事なんて、そうそう無いだろうよ。」
「そーだよね!他の用事なんて、私に話しかけに来るくらいしか思いつかないよ。」
「うん、仕事。明日は別に早くないから、今日のうちはこっちに居るわ。」
「じゃあ今日はたくさんお喋りできるね!」
「……。そうならウチ泊まってくか?風呂とバスタオルくらいは貸せるぞ」
「それめっちゃ楽しいじゃん!嬉しいなー」
「えっ、マジで?先にお前に聞けば良かったわ。もうホテル取っちまった。また今度な」
「なんだー残念!また今度だね!」
「……おう。」
……今日はやけに喋るな。…まあ、いつもの事だが。
そして楽しそうだ。最高に可愛い。

かなえの楽しそうな話し声、笑顔。僕にとってこれ以上大事なものは、なかなか挙げられない。

「しかし、去年のあの日は迷惑かけたな。かずゆきも忙しかっただろ?あの時。お前が色々助けてくれて、本当に良かった。」
そろそろビールから焼酎にシフトするタイミングだろうか。
「ああ、いいんだよそんなことは!あの時はどう考えても、ゆうすけが一番大変だっただろうからな。……俺、未だに忘れらんねえよ、あのことは」
声のトーンが変わった。ジョッキに残るビールをぐいっと飲み干す。

「……もしかしてなんだけど。かなえ、そこに居るのか?」

あー……。

「……お前やっぱすげーな。ああ、居るよ。

俺の隣に、居る。」

「……やっぱりそうか。会った時からそんな気はしてた。」
こいつは勘が良すぎるな。
「分かると思うけど、さっきからずーっと喋ってるよ、この子。」
と言いつつ隣を見ると……とても嬉しそうに笑っている。

「いや、そこまでは分からねえんだ。俺が分かるのは"そこにいるかもしれない"ってだけ。」
――そうなのか。

「姿も見えない、声も聞こえない、どっちを向いているかも分からない。きっと俺らは"存在"しか分からない。
……どう考えても、あの子のことが分かるのはお前しか居ないと思うぞ。」

左手の指輪に目をやる。去年からずっと、外す気が起きない。

「……そうだよな。やっぱり、そうなんだよな。」

そろそろ話が見えてくるだろう。
僕、ゆうすけは――――

死んだ彼女に取り憑かれている。
まずは何故彼女が死んだかを話さないといけないかな。

あれは少し前の秋の出来事だった。
その前にもっと昔の僕の過去を話すとしよう。
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