顔面価値のなくなった世界

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自分で言うのも何だか俺はイケメン高校生だ。生まれながらにイケメンに生んでくれた両親には感謝したい。顔だけで人生は決まらないが顔で人生は左右されてしまうのは間違いない。バレンタインにチョコを大量にもらった俺は、こちらを憎らしげに見ているクラスの横山を無視しながら心の中でニヤけていた。

しかしある日それは起こった。突然男も女も全ての人間が整った美形な顔立ちになっていた。学校に登校するときはやけに美男美女ばかりがいると思っていたが、登校後は知り合いの顔が変わっているのだ。おかしく思わないわけがない。

不思議なことに急に顔が変わったのに誰もおかしく思っていないようだった。ただクラスの中で一人だけ不自然にニヤついているやつがいた。横山だ。俺は放課後にやつを問い詰めた。

「おい、急にクラスのやつの顔が変わったと思うんだが、誰も気づいていないようなんだ。だけどお前は実は何か知っているんじゃないのか?」

「おや?西沢君は魔法がかかっていないみたいですねぇ。元々完璧すぎるイケメンだったからですかねぇ。」

魔法?魔法だと?理解がおいつかない中、横山はニヤニヤしながら続けた。

「僕はずっと嫌だったんだ。ちょっと顔立ちが悪いだけで周りにキモいだとか陰で言われたりしなくちゃいけないのが。ちょっと顔立ちが良いだけで周りからチヤホヤされているやつがいるのがね。」

それは明らかに俺のことだろう。

「だから世界に魔法をかけたんです。みんな平等に美男美女になるようにね。これからは顔の価値なんていらない中身だけで評価される世界になるんです。顔の価値しかなかったやつには大変な世界になってしまうかもしれませんがね」

そう吐き捨てると横山は去っていった。


顔が同じ価値になるとどうしても俺から人気は奪われてしまった。運動神経抜群の秋山や天才の夏川、そして金持ちの冬木たちに。
今まで感じたことのない嫉妬心が俺を襲う。この感情はきっと、以前は他者から俺に向けられていたものなのだろう。
……横山はずっと、こんなものを心に宿していたのか…………
そりゃあどうしても悔しいだろうな。
運動神経には元々の体格が影響する。金持ちになるには生まれた家庭がどうなのかが大きい。自分でどうすることも出来ないことでここまで差がついてしまうというのは、想像以上に絶望的だった。
だからってここで人生諦めるのは元イケメンの西沢の名が泣く!

なんとかして魔法を解かないといけない。まずは横山の身辺を洗うか。
そういえば、横山がどこに住んでいるかも知らなかったなー。とりあえず帰り道を尾行してみよう。

放課後、横山の後を追った。街中から外れた集落に行き着いた。

ーーー横山はこんなところに住んでいたのか。

俺は横山を追って、さらに奥へ進んだ。
横山が住んでいたのは孤児院だった。孤児院の名前は「五芒星院」。彼はそこで一番の年長者のようだ。そこの子供はやはり横山の魔法のせいで皆イケメンだった。しかし、俺は不思議なことに気が付いた。女がいないのだ。
そして、俺が施設の様子に夢中になっていると、後ろから黒ずくめの男にスタンガンで気絶させられた。
気づいたら俺は全裸で廃工場にいた。目の前には書き置きが置いてあった。隣には丁寧に俺の全裸の写真が置いてあった。

「今日のことは黙っておけ。さもなければ、この写真をバラす」



俺は今日学校を休んだ。首を突っ込んではいけないところに突っ込んだ気分だ。横山たちがいた施設はなんだったんだ。
その日から、俺の通る道に監視がいるようだった。思うように動けない。
その間、学校ではインキャになってしまった。目立たない。顔以外取り柄がなかったからな。あぐらをかかずに他の才能を磨いておけばよかったんだ。
一方、横山は人気者になっていた。俺が顔に頼っていたとき、あいつは内面を育てていたんだ。いまからは平等な弱肉強食が始まるのか。
俺が机に突っ伏していると、突然女子が俺の目の前にやってきた。それは学校一のアイドルだった田中きららだった。今でこそ普通の顔と言って差し支えなかったきららだが、俺の中でも学園…いや会ったことのある美少女ランキングでナンバーワンだった女子だ。ただし、苗字が「田中」だったのでまったく興味がなかった。田中の苗字にきららとかアンマッチ過ぎだろ…。

きららは俺に話しかけてきた。
「あんた、ひょっとして何か知らない!?この世界が美男美女ばかりになっている現状について!」
気づいたやつが俺以外にもいるなんて!?急に親近感がわいてきた。
「お前も気づいたのか!この世界がおかしくなったのに!?」
「ちょっと!?急に手握らないでよ」
俺としたことがつい興奮して無意識に手を握ってしまっていた。
「悪かった。場所を移そう。」
屋上に移り俺は横山の件についてきららに話すことにした。

驚愕されるかと思ったが、きららは妙に冷静だった。
「なるほどね。だからなのね。これでようやく腑に落ちたわ」
おそらく気づいたのはもともと顔面偏差値が高く変化がなかった俺らだけみたいだ。テレビの前の芸能人も気づいていない。そりゃそうか。整形してつくりあげたものだもんな。


きららと俺は一緒に行動するようになった。俺が横山への興味を失い、色恋にかまけていると監視に思わすためだ。一瞬でも隙をつくってはいけない。デスノートさながらの頭脳戦だ。
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