男が海に行く話

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トンネルを抜けると光が目を焼き尽くすように発光する。堪らず腕で目元を多い光に備えるように瞼を閉じて三泊。視界を広げるとそこには青が広がっていた。
 空をそのまま透明な液体に焼き移したかのような淀みのない青。穏やかな海原は線路一面を飲み込むのではないかと思うほど真下に広がり、まるで列車が海の上を走っているようにさえ思える。
 締め切った車内は微かに潮を感じさせるのみで窓硝子越しに映る景色は写真のように錯覚させられ、あまりの雄大な景色にほうと息が漏れる。
 時折頭上では海鳥が軽快に鳴き、列車のガタガタと擦れる音とは違ったリズムで鳴くそれは男を愉快な気分にさせた。
男は自分に酔いしれていた。まるで自分がこれから始まる出来事の主人公であるかのように。
世界は丸いと感じさせないくらい平行な世界が広がっている。

新天地へ男は足を踏み入れた。
足を踏み出した瞬間に灼熱の太陽が男を蝕む。視界を襲う陽炎と喚く蝉の鳴き声で既に男の額は汗が滲んでいる。
男は瀬戸内海に浮かぶ島で暮らすことになっていた。
男は罪を犯した。そして、自分に十字架を課した。男は一生、過去に呪われなくてはならないのだ。
海のそよ風は男の傷心を深くえぐった。
悲劇のヒーローのであろうか。しかし、男の犯した罪はヒーローに例えて良いようなものではなかった。
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