デッド・スクール

5人が参加
デスゲーム

「今から一時間後、みなさんの頭が爆発します」
突然、意味不明なことを、担任が口にした。
ついにモイはおかしくなったのか、と佐々木タクヤは思う。モイとは担任のあだ名。発案者は不明。「キモイ」という悪口から、木梨という名前通り「キ」を無くして「モイ」。ボサボサ髪で、いつも同じ服装をしており、不潔な印象が漂う中年。くわえ、常に不気味な笑いを浮かべており、とくに女子たちから忌避がられている。
放課後残ってください、と言うものだから、なにか深刻なことがあったのかと緊張していたが、第一声がそれだった。
「ちっ、俺は帰らせてもらうぜ。彼女を待たせてんだ」
丸坊主頭にピアスを開けた近藤イサオが席を立つ。隣のクラスのかわいい彼女は、とっくに学校から出ている。連れだって、周りの生徒たちも何人か席を離れていく。
「待って、いちおう先生の話を最後まで聞きましょ」
優等生のクラス委員、塩原アヤカが声を上げる。優しく、気配りが細やかで、おまけに美人で彼女を好いているものは多い。何人かは不承不承ながら再び席をつく。近藤はもう教室から去っていったようだ。
時計は午後六時を回り、窓の外は暗くなっていく。ほかのクラスたちはすでに家に到着し、マンガ読んだり、ゲームしたりしているのだろう。
佐々木タクヤはけだるげな目線をモイに向ける。いつものように、不気味な笑みがニキビ跡が残る頬に張り付いていた。
残っていても不毛だと思うがな。佐々木タクヤは吐息をついた。
「ちなみに校内からでても、頭が爆発しますよ」
加えて、担任はなにかを言っている。
「爆発してんのはお前の髪の毛だ」と、お調子者の伊藤タケルがヤジを飛ばし、数人が失笑する。
「防ぐ方法は唯一ある」
モイは急に先程は感じなかった覇気を纏ったような口調になった。スマホを取り出して、動画を撮っていた自称ユーチューバーの橋本リトの手が止まった。
「ちょ、こえーすよ。さっきから。なんすかもう」
口調はいつも通りちゃらけているが、おどおどしていた。
橋本リトのスマホに、醒めた目で一瞥してから、モイは皆に言い放った。
「校内のどこかにQRコードが隠されている。それをスマホで読み取り、URLにアクセスしたら解除成功だ。君たちの頸骨あたりにチップが埋められている。それを解除するのだよ」
半信半疑どころか、みじんも信じているような空気が、生徒たちにはない。
「ちょうど近藤くんが校内からでるところだ。彼が死ぬところを見てみるがいい」
「先生、いい加減にしてください! いくらなんでも不謹慎ではありませんか?」
ついに堪忍袋の緒が切れた塩原アヤカが机に手をたたきつけ、モイに言う。
「私たち生徒は教えを乞う身として、教師に忠実であるべきなのは理解しています。それでも冗談で生徒が死ぬと口にするのは、教師としてふさわしい言葉だとは到底思えません!」
塩原アヤカの言葉に、嘲笑軽蔑に加え、嫌悪が混じり始める。
「もとから俺たちは、こいつを教師と見てねえよ」
「今回は判断を過ったな、クラス委員長。話を聞いても意味がねえ」
「アヤカちゃん、もう帰ろうよ」
教室はすでに帰宅の流れになっている。
モイはなにも言おうとする気配はなく、ただただ不気味ににやついている。
無駄な時間だった。佐々木タクヤはカバンを肩にかける。ちょうど窓の外を見ると、玄関から一足早く教室を去った近藤イサオの姿が見えた。彼のようにそそくさと帰るべきだった。
まさに校門を出ようとするところだった。
それを眺めながら佐々木タクヤは席を立とうとする。
それは、突然だった。
校門を出た瞬間、近藤イサオの首が文字通り吹き飛んだ。
一瞬時間が止まった。そして、図ったように一斉に「キャー」とか「もうやめてよ」とかの悲鳴が飛び交った。
「わかってくれたか。これは命がけの宝探しなんだよ。もう20分も経ったか。あと40分後に、そうだな、まずは10人の首を飛ばそうか。全員ではないことに感謝しろ。では」
モイが去った後の教室はお通夜のようだった。それもそうだ。一人死んだ。そして、このあと10人が死ぬ。あいつは教師ではない。大量殺人鬼、テロリストだ。
「モイはなんでこんなことをしたんだ?」
佐々木タクヤは沈黙を破り、声を発した。
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